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道草植物図鑑No.14「ヤブガラシ」

まだまだ暑い日が続きそうですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
これから季節が進んで、秋になると紅葉が楽しみですね。

瑞々しい青から、落ち着いた赤や黄色へ
葉の色の変化は、視覚的に四季の移ろいを感じさせてくれます。

ただ、色が変わるのは葉っぱだけではありません。
「花の色」が変わる植物もいるのです!
私が花の色の変化を知るきっかけとなったのが、この植物。

ヤブガラシ
ツル性の多年草です。
今の時期、他の植物やフェンスに絡みついている姿をよく見かけます。

近寄って見てみると、金平糖みたいな小さなお花が可愛い!!!
オレンジとピンクという配色がまた、ラブリー!

そう、ヤブガラシの花の色は時間とともにオレンジからピンクへと変化するのです!

咲いたばかりのころは鮮やかなオレンジ色。
花の縁には4つの雄蕊がちょこんと立っています。
ちなみにオレンジ色の部分は花弁ではなく、花盤という花の土台となる器官だそうです。
周囲についている、緑色の萼っぽい部分が花弁。

時間が経つにつれて、花の色はピンクへと変化しています!
花弁も散り始めていますね。

最後には完全に花弁が散ってしまいました。
雄蕊もなくなって、中心の雌蕊だけが残っています。
雄蕊と雌蕊が時間差で現れる植物は結構たくさんいます。自家受粉を防ぐ戦略ですね!

この砂糖菓子のように可愛く、甘い見た目をしたお花ですが、実際に蜜たっぷりの甘い花で多くの昆虫たちの食事場となっています。

よく見てみると、花盤は透明な蜜でぷっくりしています。

小さなアリさんから、

獰猛なスズメバチさんまで。
多種多様な昆虫たちが蜜を求めてやってきます。
(観察の際は、どうぞお気をつけて。)

ヒトの目から見ても美味しそうと感じるお花ですよね!
また、東日本ではほとんどが正常な花粉ができない三倍体で、結実するのは西日本の系統が主だそうです!

さて、この植物は可愛いお花からは連想しにくい「ヤブガラシ」というなんとも強そうな名前がついています。
「ヤブを覆い尽くして枯らす」ほどツルを伸ばし成長することからこの名前がつきました。

実際に観察していると、かなり広範囲にわたりツルを伸ばして広がってる様子が分かると思います。

さらに、調べていてとても驚いたのがヤブガラシは「自種個体を識別して、自種個体には巻きつかない」そうなのです!

自分自身には巻き付かずに、効率的に分布を拡大してゆく。
見かけによらず、賢くて、強い。
目的を持って、闇雲には動かないその姿勢。
見習いたい!

可愛いお花がきっかけで興味を持ったのですが、意外と奥が深くて、観察し甲斐のある植物です!!


ヤブガラシ
Cayratia japonica
ブドウ科ヤブガラシ属

在来多年草
花時期 : 6月〜9月
生育地 : 荒地や道端、薮など


出典 : 街でよく見かける雑草や野草がよーく
   わかる本/岩槻秀明
   雑草・野草の暮らしがわかる図鑑/
   岩槻秀明
   美しき小さな雑草の花図鑑/
   多田多恵子・大作晃一

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