キンゴジカ属

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キンゴジカ属
キンゴジカ Sida rhombifolia イリマ Sida fallax
分類APG IV
: 植物界 Plantae
: 維管束植物門 Tracheophyta
階級なし : 被子植物 Angiospermae
階級なし : 真正双子葉類 Eudicotyledoneae
階級なし : コア真正双子葉類 Pentapetalae
階級なし : バラ類 Rosidae
階級なし : アオイ類 Malvidae
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : アオイ亜科 Malvoideae
: アオイ族 Malveae
: キンゴジカ属 Sida
学名
Sida L.
タイプ種
Sida rhombifolia L.
シノニム

Pseudomalachra (K.Schum.) Monteiro

和名
キンゴジカ属
英名
fanpetal
sida

キンゴジカ属 Sida(キンゴジカぞく、金午時花属)はアオイ科に属する分類群()である[1]。普通150種からなるとされ、その3分の2が南アメリカおよび北アメリカに分布する[2]。その他アフリカアジアにも分布し、日本にはキンゴジカ Sida rhombifoliaのみが自生する[2][1]

学名[編集]

Sidaは「ザクロまたはスイレン」を表す古代ギリシア語 σίδη (sídē)に由来するとされる[3]カール・フォン・リンネテオプラストスによる文献からこれを本属に引用した[4]

動物にも同名の学名 Sidaをもつミジンコの仲間がいるが、キンゴジカ属 Sida L.国際藻類・菌類・植物命名規約 (ICN)により規定されるのに対し、シダ属 Sida Straus, 1820国際動物命名規約 (ICZN)によって規定されるため、ICN 原則I(植物と動物の命名法とは独立のものである[5])およびICZN 条52.7(綴りが同じであっても動物ではないタクソンとは同名ではない[6])に基づき、両方とも認められる。

特徴[編集]

草本または低木で、星状毛に密に覆われる[2][1]。葉には普通鋸歯がある[2]。キンゴジカでは単純であるが、海外産のものではときに分裂し、羽状脈あるいは掌状脈がある[1]。花は小型または中型の両性花で、花弁が先端で重なっている[2][1]。花弁の色は黄色、白色が多く稀に淡紅色で、時に中心が暗色となる[1]。花弁の基部は短く合着する[1]花序は葉腋に1個つくか、総状、穂状または頭状である[1]。副萼はない[1]。通常花弁より短い広鐘形のが5裂片に分かれ果期まで宿存し、果実の基部と側面を包んでいる[2][1]花柄には関節がある[1]雄蕊筒の先は多数の花糸に分かれる[1]子房は5-14室で、胚珠は各室に1個[1]。果実は球形もしくは先が平たい形をしており、複数の分果に分かれる[1]。分果は裂開しないか、先だけが2裂し、1個の種子を含む[1]

[編集]

ホソバキンゴジカ Sida acuta
シダ・コルディフォリア Sida cordifolia
アメリカキンゴジカ Sida spinosa

以下に正名と受け入れられたを示す[7]多系統であることが指摘され、近年の分子系統解析でもそれが支持されるが、新たな分類体系は未だ構築されていない[1]

人間との関わり[編集]

イリマ Sida fallaxレイが描かれた絵画。

キンゴジカ Sida rhombifoliaホソバキンゴジカ Sida acutaシダ・コルディフォリア Sida cordifoliaなどは繁殖力が非常に強く、オーストラリア北部の農業地帯では雑草として嫌われる[2]アメリカ合衆国ハワイ州では、イリマ Sida fallaxの花がレイを作るのに用いられる[8]。また、イリマは薬用としても用いられ、イリマの主根にノニなどを加え、皮膚炎用の飲み薬にしたり、イリマの花と若葉と樹皮を他の植物と混ぜ喘息疲労回復に用いたり、イリマのから出る汁は乳児の便秘やお産の痛みの際に服用されたりした[8]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 大橋ほか 2017, pp.30-31
  2. ^ a b c d e f g Barker 1997, pp.84-85
  3. ^ Sida”. FloraBase. Western Australian Herbarium. 2021年5月22日閲覧。
  4. ^ Sida”. The Jepson eFlora. The Jepson Herbarium University of California, Berkeley (2013年). 2021年5月22日閲覧。
  5. ^ 日本植物分類学会 国際命名規約邦訳委員会 著、永益英敏邑田仁 編『国際藻類・菌類・植物命名規約(深圳規約)2018 日本語版』北隆館、2019年8月30日、3頁。ISBN 978-4832610521 
  6. ^ 動物命名法国際審議会 著、野田泰一・西川輝昭 訳『国際動物命名規約 第4版 日本語版〔追補〕』日本分類学会連合、2005年9月20日(原著2000年10月20日)、50頁。ISBN 4990271904 
  7. ^ Sida”. The Plant List. 2021年5月22日閲覧。
  8. ^ a b c イリマ”. AlohaProgram. ハワイ州観光局. 2021年5月22日閲覧。
  9. ^ 植村ほか 2015, p.152

参考文献[編集]

  • ロビン・バーカー(Robyn M. Barker)「キンゴジカ」『朝日百科 植物の世界 第7巻 種子植物 双子葉類[7]』1997年10月1日、84-85頁。ISBN 4023800104 
  • 植村修二・勝山輝男・清水矩宏・水田光雄・森田弘彦・廣田伸七・池原直樹『増補改訂 日本帰化植物写真図鑑 第2巻』全国農村教育協会、2015年10月10日、152頁。ISBN 978-4881371855 
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司『改訂新版 日本の野生植物 4 アオイ科~キョウチクトウ科』平凡社、2017年3月10日、30-31頁。ISBN 978-4582535341 

関連項目[編集]